スケーラビリティ問題とは?原因と影響、解決策について

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暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)は、ネットワーク上で価値の交換が可能で、送金スピードが速いことがメリットです。しかし、取引量が多くなるにつれて、処理が遅延するという現象が起きています。これをスケーラビリティ問題といいます。この問題は特に、取引量が多いビットコインにおいて顕著に見られます。スケーラビリティ問題を解決できなければ、暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)の普及は期待できません。問題が起こる原因は何か、解決策としてどのような方法が考案されているのかを紹介します。

暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)のスケーラビリティ問題とは?

スケーラビリティとは、一般的にはIT分野におけるコンピューターシステムやネットワークの拡張性のことをいいます。パソコンやソフトウェア、システムなどが、データ量や用途に応じてどのくらい対応できる能力があるのかを表します。たとえば、パーツを追加したり交換したりすることで、性能を高めることが可能なパソコンであれば「スケーラビリティが高い」といえるでしょう。スケーラビリティは、利用目的や環境によって柔軟に対応するために必要な能力です。

では、暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)のスケーラビリティ問題とは、どのようなことなのでしょうか。ビットコインの仕組みとともに見ていきましょう。


暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)のスケーラビリティ問題とは

暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)におけるスケーラビリティ問題は、取引量が増えるにつれて、データ処理が追いつかなくなることをいいます。この問題は、特にビットコインにおいて顕著です。ビットコインはネットワーク上で交換できる通貨として誕生しました。決済スピードが速いことがメリットのひとつです。しかし、取引量が増加することで、決済スピードが遅くなってしまう可能性があります。これでは、ビットコインのメリットのひとつが失われてしまいます。

ビットコインには、もともと中央管理者が存在しません。取引承認はマイナーと呼ばれる不特定多数のユーザーが、「P2P(ピアツーピア)」というシステムを通じて行っています。P2Pとはネットワークにつながれたパソコン同士がやりとりできる仕組みです。取引データが承認された後は、決済内容がブロックチェーンという仕組みを使って記録されます。しかし、ビットコインの取引情報を記録するブロックはあらかじめ記録できる容量が決まっているため、その容量を超えてしまうと、決済スピードの遅延が起こるのです。


スケーラビリティ問題の原因と問題点

では、スケーラビリティ問題が解決できないと、どのような現象が起こるのでしょうか。ビットコインの仕組みとともに、スケーラビリティ問題の原因と問題点を解説します。

スケーラビリティ問題が起こる原因

ビットコインの取引データを記録するブロックチェーンにおいて、現在の各ブロックの容量は最大1MBとなっています。ブロックの容量が取引量に対して小さいことが、処理の遅れが生じている原因です。ビットコインの処理スピードは、1件につき約10分になるように設定されています。しかし、10分で処理できるのは、承認作業がスムーズに進んだ場合です。実際には、決済処理が終わるまでの時間には差があり、10分以上の時間がかかることも少なくありません。

理由はビットコインの価格が高騰するにつれて、取引件数も大幅に増加し、その結果、決済処理が追いつかなくなり、未処理件数が増えてしまうからです。ビットコインの承認にかかる手数料は、ユーザーが自分で決めることができます。一方、承認をするマイナーは手数料が高い取引から処理していきます。その結果、手数料が低く設定された取引ほど、決済までに時間がかかってしまうのです。しかも、ブロックに記録できるデータ量が限られているため、未処理のまま長時間後回しとなってしまいます。


スケーラビリティ問題によりどのような現象が起こるのか

スケーラビリティ問題が解決できなければ、決済手段として不都合な現象が起こります。ひとつは送金に時間がかかることです。暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)は、決済手段としてそれほど普及していないものの、実際に使える店舗はあります。しかし店頭で使ったときに、決済に10分以上かかるのは不便です。数秒で決済することができるクレジットカードや電子マネーと比べても、決済スピードが遅いのは、決済手段として大きな欠点です。

また、手数料が低いと決済の承認が行われないままとなってしまいます。そのため、ユーザーは承認してもらうために、取引手数料を高く設定しなければなりません。つまり、スケーラビリティ問題により、取引手数料の高騰が起こるのです。しかし、銀行振込よりも送金手数料が高くなれば、ビットコインを使う理由がなくなってしまいます。スケーラビリティ問題は、ビットコインが将来的に決済手段として普及するためには、解決されなければならない課題なのです。


ビットコインのスケーラビリティ問題の解決策

ビットコインのスケーラビリティ問題は、解決策をめぐり論争に発展しています。コミュニティの対立により、ついにビットコインの分裂を引き起こす事態となりました。ここでは、ビットコインのスケーラビリティ問題の解決策について解説します。

ブロックサイズの拡大

スケーラビリティ問題を解決する方法のひとつとして、ブロックの容量を大きくして処理件数を増やすことが検討されてきました。しかし、ブロックサイズを大きくすると、一般的な端末では保存できなくなってしまうというデメリットがあります。ビットコインは不特定多数のユーザーが承認に参加することで、取引の正当性を保ってきました。ブロックサイズを拡大すると、処理能力の高いパソコンでしか処理ができなくなります。その結果、権力が一部に集中することが懸念されるのです。


データ容量の縮小

Segwit(セグウィット、Segregated Witnessの略語)の実装によりデータ量を減らし、送金詰まりを改善する方法も検討されています。この方法は、取引ごとに行われている電子署名をブロックチェーン以外の別の場所に保存し、ブロックサイズを縮小させるというものです。この仕組みを実装すれば、ブロックサイズは実質1.7MBまで増やすことができます。一方で、セグウィットを実装すると、これまで承認スピードを上げるために使っていた装置が使えなくなることがデメリットです。そのため、一部のコミュニティはセグウィットの実装に反対しています。


ブロックの生成時間の変更

ブロックの生成時間を短縮することで、処理スピードを上げる方法もあります。ビットコインはブロックの生成が約10分ごとに行われるように調整されています。ブロックの生成時間が短くなれば、それだけ短時間で多くの取引を処理することが可能です。しかし、この方法ではブロックのフォーク(分岐)が起こりやすくなり、二重払いのリスクが高まってしまうというリスクがあります。


ライトニングネットワーク

ブロックチェーン以外のネットワーク(ライトニングネットワーク)で取引処理をする方法も検討されています。ライトニングネットワークで取引処理をしてから、ブロックチェーンに記録するという方法です。ブロックに記録される取引データは一部なので、データ容量を減らすことができます。ただし、ライトニングネットワークにはセキュリティ面で課題があり、今後セキュリティ対策の強化が期待されます。


イーサリアムにおけるスケーラビリティ問題の解決策

スケーラビリティ問題はビットコインだけでなく、ブロックチェーンの仕組みを使っている暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)すべてに関わる問題です。イーサリアムも今後取引量が増加すれば、取引処理の遅延が起こる可能性があります。ここでは、イーサリアムにおけるスケーラビリティ問題の解決策を紹介します。

PoSへの変更

イーサリアムの承認方法は、ビットコインと同じくPoWという承認システムを採用しています。PoWは計算処理を競い、いち早く計算問題を解いた人が報酬を獲得できるシステムです。しかし、PoWでは無駄な計算作業が多くなってしまうという欠点があります。結果として、処理スピードも遅くなってしまうのです。そのため、イーサリアムはPoWからPoSへ変更する準備を進めてきました。PoSは保有するコインの量に応じて承認を行うシステムです。無駄な計算を行う必要がなく、効率的に取引処理ができます。


シャーディング

イーサリアムではデータを複数のサーバーに分散させ、取引処理を行うことで処理スピードを上げることも検討されています。イーサリアムはもともと取引の検証作業を単一のノード(端末)が行っていました。しかし、シャーディングが採用されると、ほかのグループに検証作業を分散することが可能です。各グループで同時に検証作業を行うことで、取引処理を効率的に行うことができます。結果として、決済スピードが速くなるのです。


プラズマ

イーサリアムのメインチェーン以外に、プラズマチェーンを利用することで、高速な取引処理を可能にする方法も考案されています。プラズマチェーンとは、ブロックチェーンをもとに階層的にチェーンをつなげる方法です。ライトニングネットワークにも似ていますが、プラズマは全く別ルートのチェーンではありません。あくまでもブロックチェーンにつながったチェーンという点で異なります。プラズマは決済処理だけでなく、スマートコントラクトの実行速度を高めることも可能です。


ライデンネットワーク

ライデンネットワークとは、ビットコインで検証されているライトニングネットワークと同様の仕組みです。イーサリアムのメインチェーン以外に、オフチェーンで取引を承認することで、決済スピードを上げることができます。この仕組みにより、データ容量の増加に対応することが可能です。特に、少額決済が便利になることが期待されています。


スケーラビリティ問題の解決で決済がより便利に!

ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)で懸念されている、スケーラビリティ問題。解決するために、さまざまな方法が考えられています。解決策が実行されれば、暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)の利便性はますます高まるでしょう。しかし、2019年現在、解決策は開発途中の段階で、今後の動向を見守っていく必要があります。スケーラビリティ問題の解決により、暗号通貨(仮想通貨、暗号資産)の価値が高まることも期待されます。


参考:

スケーラビリティ問題とは|Quoine株式会社

Segwitとは何か?今さら聞けない仮想通貨|CRYPTO TIMES